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残留農薬がアルカリイオン水で除去できる?

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アルカリイオン水の整水器の訪問販売や実演販売を見たことがある人の中には、「アルカリイオン水で残留農薬が除去できます」といったうたい文句を聞いたことがある人が居るのではないでしょうか。現在ネットで「アルカリイオン水 農薬」等と検索をしてみると、「アルカリイオン水で残留農薬が除去できました」といった内容の記事を見つけることが出来ます。アルカリイオン水でなくとも、ホタテ粉末や水酸化カルシウムなどの粉末を水道水に溶かして使用するタイプもあります。こちらはホタテ粉末(生石灰)を水道水に溶かすことでアルカリ溶液にしているので、アルカリイオン水と同じ状態になります。

 

pH12~13のアルカリイオン水を野菜洗いの専用水として売り出しているメーカーもいるようです。そこで我々もとりあえずアルカリイオン水に野菜を浸けてみてどうなるのか調べてみました。使用したのはKIRINの「アルカリイオンの水」という製品です。こちらの商品はpH8.8~9.4のアルカリ性の水で、おそらく最も安価で手に入れることが出来るアルカリイオン水でしょう。使用した野菜はこの手の実演で真っ先に使用される野菜であるプチトマトと、ブロッコリーを選択しました。
結果
この2つの野菜をそれぞれプラスチック製のコップに入れ、アルカリイオンの水を入れます。この段階でプチトマトに色が出始めている気がしますが、もう少し観察していきます。その後観察していくと、トマトの側は図のように水が薄く黄色に着色されました。写真でみるとほとんど分かりませんが、肉眼で観察するともう少し色が付いています。対してブロッコリー側はバックに存在するペットボトル内の水とおなじぐらい水は澄んでいて、色はまったく付いていません。

 

野菜用洗剤で現れた変化は残留農薬ではなく天然の成分

アルカリイオン水で出てくるものが農薬であるならば、何の変化もないブロッコリー側は無農薬で栽培されたということになるのでしょうか。どちらも同じスーパーで購入し、あえて「無農薬」という表記のない安いブロッコリーを選択したのですが・・・
もちろんそんな理由で色が付かなかったのではなく、ブロッコリーには含まれておらずトマトに含まれている成分が出てきてしまっているということが考えられます。この黄色の成分として考えられるのは、トマトの色素成分である「リコピン」であると考えられます。その色素成分がアルカリ性の溶液(今回はアルカリイオン水)に流出することで、このような現象が見られるのでしょう。

 

このように悪質な実演販売などで行なわれている実験は誰かが投げたフリスビーをUFOと断言するような、根拠のない、実証も検証もせずに行われているものが多いので注意が必要です。ここまででトマトとブロッコリーをアルカリイオン水に浸ける実験をして「アルカリイオン水が残留農薬を除去する効果はない」ということを紹介しました。実は今回の実験では、もう1つ結果が出る予定でした。それはブロッコリーでワックスが落ちるといわれている現象です。その為にブロッコリーを選択しました。

 

ワックスブルームは農薬ではなく天然の物質

ブロッコリーをはじめとした「アブラナ科」の植物は11月~3月が旬の寒い季節の野菜です。因みに種まきをずらして栽培されるので年中食べることが出来るのですが、春に種をまき夏に収穫をする時期のブロッコリーは他の季節のものよりも害虫対策の農薬は多く散布されるそうです。今回の検証は2016年7月12日で季節は夏ですので、もしもアルカリイオン水等のアルカリ溶液で農薬が除去できるのであればこの時期のものが最も農薬の汚れが出てくるはずとなっています。しかし今回の実験では何の変化も起こりませんでした。

 

ネット上で「ブロッコリー 残留農薬」で調べると「ブロッコリーに散布された残留農薬が落ちている」とされる写真が出ているかもしれません。その時に出てくるのはトマトで出てきたような黄色っぽい液体ではなく、油やワックスが水に浮いているような状態になっています。冬場のブロッコリーではこのアルカリイオン水は関係なく「ブロッコリーを水で洗ったら白い油のようなものが浮いてきたがこれは農薬か?」というようなクレームがでることがあります。これはブロッコリー等のアブラナ科の植物の特徴で、植物が乾燥や害虫等から自身を守る為にロウ状の物質を分泌する「ワックスブルーム」というものが原因です。

 

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アブラナ科の植物に限らず植物の葉は乾燥から自身を守る為にワックスブルームを分泌します。写真のブドウの表面が白くなっているのもワックスブルームです。アブラナ科の植物はこのワックスブルームが特に多く分泌されます。そしてこの白い油のようなものについての回答として東都生協は洗って出てくる白い油分をワックスブルームであるとし、念のため残留農薬検査を行っているがこのようなケースで農薬が検出された事はないとしています。

 

野菜用洗剤のメーカーになんという名前の農薬が検出されたのかを聞くと…

なお、pHの高いアルカリイオン水を使用した野菜を洗浄する商品を販売しているメーカーに「洗浄した後の水を検査して残留農薬が検出された」からこそ残留農薬が落ちていると表現していると思われるが、どのような農薬が検出されたかという内容の質問をしたところ、野菜に使用されている農薬は様々な種類があり使用される農薬は定まっていない、表面のツルツルしたトマトやきゅうり等からでてくる液体は展着剤だと「考えられます。」との返答を頂きました。

 

正直返答になっていないのでなんともいえない気持ちになりましたが、とりあえずこの回答から「その製品を使用して出てきた液体(トマトなら黄色い、ブロッコリーなら白い油分)を検査して残留農薬が流れているのか検査しているわけではない」ということと、つまり「出てきた液体は多分残留農薬じゃない?」程度の認識でしかないことと「表面がツルツルした、つまりワックスブルームの多い植物から多く残留農薬が検出されている」と説明してくることが分かりました。今回はしませんでしたが、無農薬栽培の野菜から同じ現象が出たと質問をしたらどのような返答をしてくるのか…

 

2種類の無農薬ではない野菜で市販のアルカリイオン水で農薬除去とされる現象の確認実験と、その効果を謳う製品を販売しているメーカーに問い合わせをすることによってアルカリイオン水で残留農薬が除去できるのかについて解説しました。結論としてはアルカリイオン水に残留農薬除去効果とされている現象は野菜の元々もつ別の成分が検出されているだけであるということになります。

 

そもそも残留農薬は気にする必要が無い

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この結論で終わりにしては「じゃあどうすれば残留農薬が除去できるの?」というわだかまりだけが残ってしまうと思うので、残留農薬について解説します。結論を先にいってしまえば、国産の農作物であればそもそも残留農薬に対して身構える必要は無いのです。お手元の野菜が「中国産」等であれば流石に注意した方が良いですが、国内産であれば「残留農薬のポジティブリスト制度」という形式がとられています。これは基準値が定められている農薬は基準以下、基準が定められていない農薬は0.001ppmという2段階の基準を作り、これまで「規制されている農薬ではなかったから流通させるしかなかった野菜」を流通させないようにしています。

 

なお、このときに何でもかんでも0.001ppm以下としてしまってはガーリックオイル等農薬ではないが虫を遠ざけることの出来る、某男性アイドルグループの作っている畑で使われている「無農薬農薬」のようなものさえ使えなくなってしまいます。また、現在の農薬は技術が進歩しており散布後日光等で化学反応を起こし無毒化するようになっています。そこで農薬が無毒化した後の重曹等の物質やガーリックオイル等の健康に悪影響を及ぼさない物質に関しては対象外物質として残留していても流通できるようになっています。

 

このような「健康に害の無い物質のリスト」「農薬の基準値」「2つの項目以外の物質の一律基準」という2つの基準値と除外リストを設定し、流通する野菜に残留農薬の危険性が無いように規制をしているのです。このときの検査では「農作物を洗わずに」検査しているので、表面に着いた埃などが気にならなければ洗わずに食べても基準値を超える残留農薬を摂取してしまうことは無いのです。因みにこの基準値についても1日でこれくらいまでなら摂取しても健康に影響の無い「許容量」の1/100以下に設定されています。

 

この基準値以下で残ってしまっている残留農薬に関しても、水で洗ったり皮を剥いたり加熱調理をすれば10~90%除去をすることが出来ます。全ての農作物を調理せずにそのまま食べている人はいないですから、普段行っている調理がそのまま「残留農薬除去」に繋がっているのです。面白い実験結果を出している研究チームがいます。アメリカのコネチカット州の農業試験場が農薬で育った農作物を「ただの流水を30秒(水道水)」「農作物専用洗剤(アルカリ性の溶液)」「食器用洗剤(実は野菜も洗えるものもあります)」という3種類の方法で洗った結果、残留農薬除去率に違いは無かったと報告しています。その研究チームは結論として農作物は30秒以上の流水で洗うようにしましょうと言っています。お金をかけて除去能力に差が無い洗剤等を買うより、よっぽどリーズナブルで良さそうですね。

 

まとめ

  • ホタテの粉末(生石灰)やアルカリイオン水が「残留農薬を除去できる」野菜用洗剤として出回っている
  • トマトで実験してみたら確かにアルカリイオン水が薄く黄色っぽい色になったがブロッコリーは変化が無かった
  • どちらかというとブロッコリーは夏場の方が農薬は使われているはずなのに実験では変化は無かった(結局あまり使われていないが)
  • 調べてみるとトマトのリコピン(色素)の可能性が高い
  • 冬場はブロッコリーを水で洗うと油分が浮き「残留農薬ではないか」と苦情が出る季節
  • ブロッコリーには自身を守る為にロウ状の物質を分泌する性質があり浮いている油分の正体はこれ
  • アルカリイオン水の野菜用洗剤の業者は除去出来ているとしている農薬の種類を調査していない可能性が非常に高い
  • アメリカの研究チームによると流水でも洗剤でも残留農薬除去能力に変わりはないと結論付けている

今回の記事は検証だけで終わらせようと思ったのですが、結局普段とあまり変わらない記事になってしまいました。
まさかワックスブルームが夏場にあまり出てこないとは…
検証を行う時点で結果の検討は付けていたのですが、アルカリイオンの水のpHでは思ったよりもトマトのリコピンが流れなかったこと、大根等アルカリ溶液で変化が起こらないと考えられる野菜を入れるのを忘れていたこと、買いに行ったスーパーで無農薬野菜のコーナーが無かったこと等、反省すべき点がたくさんあります。自分への戒めと、解説部分の文章が自分の中では上手く書けていたと思ったので記事は上げますが、次回実験を行うときは事前準備をもっとしっかりするようにします。因みに野菜用洗剤ですが、ブドウの表面のワックスブルームで白っぽくなっているのを除去する力はあるので、使わないよりも美味しそうに見える効果はあります。

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