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水は腐るが腐らない

 

最近は災害対策で水を常備していらっしゃる方も多いと思いますが、その水はどれくらい前から保存しているものですか?
塩や砂糖は賞味期限が設定されていないことをご存知の方は多いと思いますが、その括りの中に無意識に「水」も含めてしまっている方も多いでしょう。
特に川の水や地下水など自然界で飲むことの出来る水を汲んでいるミネラルウォーターには腐るというイメージがつきにくいかと思います。

 

実際に人によっては「水は振動を与え続ければ腐らない!」や「水は腐らないが長期保存でペットボトルの臭いが移るだけだ!」などと認識している方もいらっしゃいました。
逆に「水はすぐに腐る」という認識の方もいらっしゃるようで、「水道水を1週間汲み置きしていると腐ってしまいますが市販の水には保存料などが添加しているから腐らないのか?」という疑問をもってらっしゃる方もいました。
では、本当のところ水は腐るのかどうかということを解説していきます。

 

先に結論を申し上げますと、水(分子)は腐りません。
しかし、(自然界に存在する)水は腐ります。
腐る、つまり腐敗と表現されている反応とは、微生物により有機物が分解され悪臭を放つ物質や有毒な物質に変質することを指します。
微生物が有機物を分解する事は同じで、分解した結果アルコールが発生したり味噌や納豆、ヨーグルトやチーズが出来るなど、人にとって有益な場合は発酵と呼びます。

 

水の分子は分解されれば酸素と水素を発生させますが、水分子は有機物ではなく炭素原子を含まない無機物であり、微生物は分解できません。
では(自然界に存在する)水は腐るというのはどういうことなのでしょうか。
これまで話した通り水そのものは腐りませんが、水に含まれる有機物が腐ると異臭や有害物質が発生し「腐った水」と表現されます。
一切手入れをされなくなった池を思い浮かべていただけると想像しやすいでしょう。

 

 

雑菌など水に含まれている不純物が腐ることで「水が腐る」

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手入れをされなくなった水には藻や微生物が発生したり虫の住処となったりします。
そしてその藻や微生物や虫の遺骸などが腐敗したり、その遺骸を栄養として微生物などが増殖します。
そこまでいくと水は完全に濁り異臭を放ちますし、飲む人はいないとは思いますが飲んだらおなかを壊してしまうでしょう。
この状態になったとしても水分子そのものは腐っていません。
その水に含まれている大量の有機物が腐っているだけなのです。

 

当然ながら規模は小さいですが、賞味期限が大幅に切れたり、一度開封して少し飲んだ水の中では同様の現象が起きています。
特に一度開封し口を付けた水は唾液中に含まれる雑菌や空気中に含まれる雑菌が水の中に入り込みますので、その日の内、遅くとも翌日には飲みきるようにしなければ雑菌が繁殖し「腐った水」となります。
ペットボトルの水は口を開けなければ2年間程度の長期間保存は可能となっていますが、これは開封しなければほぼ密閉されている状況である為空気中の雑菌などが侵入しないからです。
それでも「ずっと腐らない」というわけにはいきません。

 

これは開封していなくとも既に水の中に雑菌が含まれてしまっているからです。
これを意外に感じる人もいるかもしれませんが、雑菌に関してであれば市販のミネラルウォーターよりも水道水の方が優れています。
水道水は雑菌を完全に除去した後に塩素消毒をして雑菌が繁殖しないようにしていますが、ミネラルウォーターは加熱殺菌程度していません。
そして一般細菌(雑菌)に関しては、ある程度存在しても問題なくペットボトルに充填し販売することが出来るのです。
更に海外のミネラルウォーターに関してはほとんどが「加熱殺菌」すらしていません。
その為日本のものよりも賞味期限が短くなっています。

 

このように開封前のペットボトルの市販水であっても完全に無菌状態ではないので、賞味期限が設定されています。
近年防災用品として長期間保存することの出来る保存水も存在しますが、これは殺菌した水を無菌状態で充填している製品なので、長期保存が可能となっています。
なお、「船旅で積んでいる水は畝の揺れで振動が起こっているから腐らない」「川で流れている水が腐っていないのは流れという動きがあるからだから、常に振動を与えていれば腐る事はない」などと仰っている方もいらっしゃいましたが、それはありえません。

 

 

上流の川の水を定点観察しても目に入るのは新しい水だけ

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川の水は上流から下流に一方通行で流れており循環している訳ではありません。
とはいえ流れきった水などが蒸発し雲となり雨が降れば上流に戻るとも表現できますが・・・
上流で湧水となっているのは地層など自然のろ過フィルターによりろ過された水ですので雑菌は少ないですが、下流に向かい微生物等の不純物が多くなります。
これらの微生物を食べる生物や微生物が存在する為、水に含まれる微生物は一定以上にならず、清潔性を保っています。
これを自浄作用といいますが、下流に向かうほどにこの自浄作用が落ちて水質は落ちていきます。

 

川の水は流れているから腐らないという人は、この「自浄作用のある上流に流れている部分」だけをみてそういっているのでしょう。
当然ながら流れている水は数分前に流れている水とは異なります。
数分前に流れている水は水質が悪くなっている下流に流れていますからね。
そしてその理論をもって「水を揺らすなどして振動を与え続ければ腐らない」といっています。
因みに中世の船乗りは水分補給として(お酒と比較して)腐りやすい水ではなくビールやラム酒等を飲んでいたようです。

 

揺れることによって対流がおきて酸素が取り込まれるなど一部の細菌がすみにくい環境になれば多少は腐敗が遅くなるかもしれませんが、それでも腐ることはないでしょう。
因みに研究で大腸菌を培養する場合、寒天培地から液体培地に移した後に37℃で1晩揺らしながら培養します。
もしもこのとき酸素が取り込まれないように蓋を閉めた場合大腸菌は酸欠で死んでしまいますし、揺らさなければあまり増えません。
水はその時に使用する培地ほど栄養があるわけではありませんが、存在できない環境ではありません。
参考までに…

 

以上のように、水は水そのものが腐るのではなく、水に含まれる不純物が腐ることで「水が腐る」と表現されるのです。
なお、水分子しか存在しない純粋な水を作ることに成功したとしても、不純物のない水には不純物を取り込もうとする性質が存在しますので、その状態を維持する事は難しいでしょう。
現在の技術で極限まで不純物を取り除いた水(超純水)はハングリーウォーターとよばれており、空気にさらしただけで酸素等の気体や空気中の雑菌を取り込んでしまう為超純水の状態を維持するためには細心の注意が必要になります。

 

 

まとめ

 

 

  • 水分子は腐らないが水に含まれる不純物が腐る
  • 市販のペットボトルに入った水が長期間保存できるのは密閉されているから
  • 密閉されていても保存出来る期間(賞味期限)が存在するのは容器の中に雑菌が存在しているから
  • ペットボトルを揺らし続けても腐るものは腐る

 

 

腐った水を逆浸透膜などでろ過すれば綺麗な水として飲むことができます。
これも腐った水が、水が変質して腐っているのではなく水に含まれた不純物が腐っているだけだからということに繋がるでしょう。
因みに振動を与え続ければ水は腐らないという話が出た時に「大腸菌用のインキュベーターで培養したらどうなるんだろう」と疑問に思ってそのまま自己完結しました。
ペットボトル等の蓋を開けなくてもミネラルウォーターであれば中に雑菌が存在しているでしょうし、水を腐らせないように振動を与えて空気を取り込ませ続ければその雑菌が繁殖するのではないかと思います。
今回の題名を考えた時に、ふと松岡修造さんの「考えるな!、考えろ!」という名言を思い浮かべました。
考えて何とかなることはとことん考えて、どうしようもない事は一切考えるな!ということらしいですが、自分が悩むことがどちらに分類されるかを考えるところからはじめるのは大変そうですよね。

 
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