水の波紋

「超純水って体に悪いらしいよ」
水について興味を持ち調べている人の中には、このような噂話を聞いたことがあるのではないでしょうか?
ここで「超純水」って何?という方もいると思いますので、少々紹介したいと思います。

 

 

そもそも超純水とは何か?

 

自然界で存在する水にはカルシウムやマグネシウム等の「ミネラル」成分が水の中に溶けていて、このミネラルの量が多い水を硬水、少ないと軟水と呼びます。
一般的に硬水は石鹸などでの泡立ちが悪くなってしまったり、ミネラル分が衣類に付着して色がくすんでしまったり、ミネラル分が酸化してしまうと悪臭の原因となり、更に蒸発するとミネラル分が白い斑点として出てきてしまう為に洗濯や工業用の水には適していません。
またミネラル分の多い水は口当たりが重く癖のある味であるため好みが分かれますし、硬水のミネラル分であるマグネシウムは腸管内での吸収がされにくく水分の吸収を阻害してしまう為、人によっては下痢になってしまいます。
料理でも和食で有名な旨み成分であるグルタミン酸のイノシン酸の抽出を阻害してしまう為軟水の方が良いとされている他穀物(米等)も軟水の方が良いとされている為に料理、飲用水としても軟水の方が適しているとされています。

 

 

しかし肉の煮込み料理は余分なたんぱく質を灰汁として出してくれたり肉を柔らかく、臭みも消してくれる為硬水の方が好まれることもあります。
軟水は硬水とは逆に飲用や料理、洗濯や工業用に適しているとされていますが、水道管などを硬水よりも腐食させる傾向にあるとされています。

 

 

ここまでで軟水と硬水はなんとなく分かったけれど、結局超純水ってなんなのさ?
という疑問が出ると思いますが、ここから純水が出てきます。
このように一般的に水といっても水(H2O)そのものではなく、ミネラル分という不純物が混ざっています。
また細菌等の微生物やミネラル分以外の不純物も存在するので更に純粋な水からは離れた物になります。

 

 

純水はこれら細菌等やミネラル分(不純物)を除去し純粋な水に限りなく近付けたもの、庁純水は純水以上に不純物を取り除きほぼ純粋なH2Oにしたものとなります。
この純水・超純水はどこに利用されるかというと、半導体の洗浄水といった工業用、製薬・医療分野や研究用にも使われています。
その理由として、

    • 半導体という精密機械においてミネラル分等の付着は故障の原因となること
    • 製薬・医療分野というあらゆる面で安全性が保たれる必要があること
    • 研究において不純物の混入(コンタミネーション)は実験結果に誤差を生じさせる原因となること

 

といったように、水に不純物があるだけでも支障が出てきてしまうようなときに純水・超純水は用いられます。

 

 

純水は人体に有害なのか

 

ではこの純水・超純水は人体に対して毒となるのかという最初の疑問に戻りますが、結論としては「無害」です。
どのような水であれ1日に何十リットルも飲んでしまえば水中毒という症状が出る為「いくら飲んでも無害だ」とは言いませんが、「超純水」というキーワードで検索すると出てくるような毒性はありません。
ここでどのような毒性が出てくるかをいくつか紹介しますと

    • 純水・超純水は何も含んでいない為有機物などを全て吸収する為、純水を毎日手で触れていると手がカサカサになる。
    • 純水・超純水は他の物質を溶かして自分自身に取り込む性質が強い物質であり超純水はそれが最も強い状態であるために触れれば手は荒れるし飲めば体内の栄養素を取り込んでしまう
    • アルミ製のやかんで超純水を沸かすとアルミニウムが大量に溶けた水を飲んでいる状態になる
    • 超純水を大量に飲むと粘膜がただれ浸透圧の関係で急速に吸収されてしまう為血液が希釈されるので3L程度の飲用で命に関わる

 

本当にこんな事になったらとんでもないものなんですけどね?
実際にこのような事が起こる事はまずないでしょう。
なぜならば、超純水をその状態を保ったまま飲用する事は不可能に近いからです。
この「超純水有害説」を唱える人たちの言う通り、水には物質を何でも溶かし込む性質があり、超純水は別名ハングリーウォーターと呼ばれています。

 

その性質上精製後空気中の空気(二酸化炭素や揮発性の有機物)や材質によっては容器からも成分が溶解してしまいます。
その為超純水の精製機を製造販売しているメーカーは使い切る量をその都度精製することを強く推奨しています。
これは別に「入れた容器が溶けて無くなってしまうから早く使ってね」と言っているわけではなく、早く使わないと超純水の品質を維持できなくなってしまうからです。
そのような「超純水の状態」を維持することが難しいものを飲んだところで、口の中の唾液などで即座に純水とも言えなくなった水を飲んでいるだけの状態になります。
皆さんは水道水を飲んでも粘膜がただれて最終的に死んでしまうとお考えですか?

 

ここで「歯が溶けてしまうのではないか?」という考えを持った人もいるかもしれませんが、結局砂糖を含んだ食べ物や飲み物を食べているときの歯に対する負荷と大差ないようですね。
超純水を扱う人たちは大抵の場合素手で扱う事はありません。
この点を逆手に取って「超純水を扱う人は手が荒れてしまったりして危険だから素手で扱っていない」と表現している人もいますが、別に超純水から手を保護する為に素手で扱っているわけではありません。

 

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筆者自身遺伝子工学を学んでいたことがあり超純水を取り扱ったことがありますが、素手で扱わない理由はコンタミネーション(異物混入)を避ける為に素手で扱っていないのです。
超純水の用途は記述した通り不純物の無い水を扱わなければならない環境にあるわけなのですから、素手で作業をして手垢や微生物が混入させるわけにはいきません。
このように超純水そのものには確かに何でも溶かす作用がありますが、その作用が飲用や手で触ったところで人体に悪影響を及ぼす可能性は非常に少ないでしょう。
このような「超純水有害説」が出てきている理由としては

    • 超純水の性質を過度に恐れた結果
    • 大学の講師が精製にコストの掛かる超純水で遊ばれないように脅した結果
    • 細胞に直接超純水を滴下した等の実験室レベルの話をそのまま人体でも起きると誤認した結果

 

等があると考えています。

では実際に私が超純水を飲用することを勧めているのかと言うと、まったくお勧めはしません。
その理由として、美味しくないからです。
ミネラル分が非常に多い過度な硬水は癖のありすぎる味がしますが、水の味はミネラル分に依存しています。
水は無味無臭の液体である為ミネラル分の味を感じ取りますので、純水レベルであれば好みも出てきますが美味しいと感じることが出来るでしょう。
しかし超純水は不純物がほぼ無い状態であるため、味がしないのです。
飲めないという勘違いはこれが原因なのではないかと思うほど美味しくないのです。
その為あまり超純水を飲用することをお勧めはしません。
この超純水ですが、珈琲やお茶を抽出すると雑味(水の味)がしない為非常に美味しく感じることが出来ますので、機会を作る事は難しいと思いますが超純水で珈琲を淹れてみると普段とは違う珈琲そのものの味を楽しむことが出来るでしょう。

 

まとめ

 

  • 超純水は不純物がほぼ無い限りなく純粋な水
  • 超純水を飲んだところで体に悪影響がある可能性は非常に低い
  • 非常に不味いので超純水をあえて飲む必要性は無い
  • 超純水で淹れた珈琲は珈琲そのものの味

 

 

個人的に「超純水を飲んだら皮膚が~…」と言っている人は超純水が物質を取り込む性質と超純水と言うものが限りなく純粋な水であるという点を組み合わせて考えられていないのではないかと思っています。

もし何かの弾みに機会があれば、超純水で淹れた珈琲を飲んでみたいなと思いました。

学生時代にその発想がなかったのが悔やまれます。

 
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